阿波美アワビ図鑑・田井の浜日記:徳島県美波町

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【エッセイ】もしもあなたの生まれた街が、朝ドラの舞台になったら?(これを書いた時期2020年4月、東京)

ウェルかめ〜それは、大いなる夢の始まりだった!



【※2020年4月に書いたエッセイの内容を、以下丸ごと転載します!】

 もしもあなたの生まれた街が、朝ドラの舞台になったら?

 

 

 「朝ドラが始まる~ぅ! 早く、早く……起きなくちゃ……」(心の声)

 

 平日休みの日、NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」が目覚まし時計になっている。休みの日に損したなぁ~と思うのはやっぱり、うかつにも昼前まで寝すぎてしまった時である。……が、朝ドラの「続きを早く見たい!」という欲求は、無駄に長時間寝すぎる事を、しっかりと防ぐ役割を果たしてくれている。

 

 現在は「エール」が放送されている朝ドラだが、やはりいつも中毒性がある。必ず続きが気になる終わり方をする。そのお約束がある為、なかなか観るのを辞められない。最近は「半分、青い。」を見始めてから、観るのを辞められなくなってしまった。結果的に「エール」が、志村けんさんの遺作になってしまった事もあって、これから志村けんさん出演回に向けて、再び朝ドラが盛り上がっていくような予感がしている。

 

 

 

 

 そんな朝ドラではあるが、僕はかなりの無名な地方出身者であるという自覚があったので、生まれ故郷が舞台になるTVドラマが放送されるなどという想像は、人生のある時期までは全くした事がなかったのだが、ある年にそれが思いがけないタイミングで、現実のものとなった。

 

 それが2009年(平成21年)に放送された「ウェルかめ」(倉科カナ主演)である。舞台は、徳島県美波町(みなみちょう)。僕が生まれた町であるが、知らない人が、ほとんどだろう。このドラマが放送されていた頃、千葉県に住んでいたが、子どもの頃遊んだ砂浜や、最寄駅、初詣に行っていたお寺等が、帰省していないにも関わらず、毎日テレビで大写しで見られるのである。毎日が歓喜の連続だった。「うわぁ~、これは田井の浜」「おぉ、大浜海岸でロケが行われとったん?」……放送中は、かなり興奮していた事を覚えている。

 

 主人公であるヒロイン・波美(なみ)の職業は、出版社勤務であるという設定で、雑誌編集の裏側にも興味のあった僕としては、十分に楽しめる内容だった。にも関わらず、ネットでは主演女優・倉科カナの巨乳しかあまり話題になっていなかったこともあって、方言等が全国には受け入れられにくいのかと少々残念に思った記憶がある。美波町出身者としての視点で見ていると、かなりツボにハマるシーンの多いドラマだったが、知らない人たちにとっては、とっつきにくい部分もあったようだ。

 

「全話DVDセットが発売されたら、絶対に買うぞ!」と、強く決意していたドラマであったが、放送終了後に発売されたDVDは、総集編スペシャル1巻のみであった。

 

 今、改めて朝ドラの歴代視聴率ランキングを振り返ってみると、残念ながら「ウェルかめ」は、平均視聴率13.5%でワースト1位になってしまっている。ストーリー的には、十分面白かったのだが、それでもワースト1位になってしまったのは、やはり放送されていた時間帯が、時代に合わなくなってきてしまっていたからだろう。

 

「ウェルかめ」までは、放送時間が8時15分から8時30分までだった朝ドラが、次の「ゲゲゲの女房」からは、8時から8時15分までに変更された。その影響もあってか、「ゲゲゲの女房」からは平均視聴率18.6%と約5%ほど盛り返している。視聴率ワーストランキングの中に入っているドラマは、ほぼ2004年から2009年までの作品に集中しており、結果的にその時期が朝ドラ冬の時代になってしまっていた事がわかる。決して出演されていた俳優さん達や、脚本家の責任だけではないと思う。

 

「ウェルかめ」の中で、とても印象に残っているシーンがある。それは小学生時代のヒロイン「波美」と、大手出版編集長「近藤セツコ」との会話の1シーンである。

 

波美「夢ってどうやったら、かないますか?」

近藤「あなたの夢は何?」

波美「先生のように都会に行って、世界とつながって、いろいろな情報を自分らしく伝えられる人になる事です」

近藤「そう、じゃぁ、一つだけ教えてあげる。どんな夢でもねぇ、夢はかなえるものなの。時間はかかるけど、かなえるの、かなえちゃえばいいのよ!」

 

 この会話は、後に成長して雑誌編集者になった波美が、近藤セツコと再会したシーンでも、再度繰り返される。

 

「どんな夢でもねぇ、夢はかなえるものなの。時間はかかるけど、かなえるの、かなえちゃえばいいのよ!」

 

 久しぶりにDVDを再生して、改めてこのシーンを振り返ってみたが、やはりこのシーンは、見ていて胸が熱くなる。このシーンだけでも、このドラマには十分、見る価値があったように思う。

 

 もしもあなたの生まれた街が、まだ朝ドラの舞台になっていなかったら?……

 

 とても幸せな事だと思う。なんてったって、将来……あなたの故郷が、ドラマの舞台になるかもしれないという夢を、いつまでも持ち続ける事ができるから。

 

 令和になってからの……我が地元・美波町がどうなっているかというと……

 

 ここ2~3年、帰省した時に感じるのは、朝ドラブームが完全に終わってしまい、また元の過疎の状態に、じわじわ逆戻りしていっているという事実である。

 

 地元が寂びれていく様子を、ただただ指をくわえて見続けているだけでは悲しい。

 

 だからこそ僕は今、地元を盛り上げる為の活動も、「小説」の力を借りて、これから始めていきたいと思っている。

 

 地元を舞台にした面白いミステリーを書き、それをいつかヒットさせる。ドラマ化されれば、再び画面の中に、大きく映し出された故郷の街を見る事ができる。映画化されれば大きなスクリーンの中に、故郷の景色を眺める事ができるのだ。

 

 ……そのような妄想を描きながら、今年は久しぶりに長編小説をなんとか書ききろうと思っている。(たぶん今年書く作品では、地元は舞台にしないと思うが……

 

 自分の書いた小説がドラマ化されるのを目指す! 映画化されるのを目指す!

 

「そんなの絶対ムリ!」って笑われそうな夢だけど、そう思う度ごとに「ウェルかめ」のセリフが蘇ってきて、心の底から離れない。

  

 朝ドラは主人公の生き様から、人生を振り返るきっかけを与えてくれる展開が多い。見方によっては、朝ドラが夢を叶えるドラえもんの役割を果たしてくれる事も、十分ありえると思っている。

 

「どんな夢でもねぇ、夢はかなえるものなの。時間はかかるけど、かなえるの、かなえちゃえばいいのよ!」

 

***********以上、転載終わり

 

 このエッセイを書いてから半年後、私は、とある小説家養成講座にて、提出した小説のあらすじの設定がおかしいと講師の先生から指摘され、ボコボコに批判された。そして、その後しばらくは、すぐには立ち上がれないほどに凹んでいた時期がある。

 しかし、その一ヶ月後に、エッセイ集出版プロジェクトの編集をやってくれないか?というオファーをいただいた。引き受けたことによって、今の私がある。しばらくエッセイ集の編集長業務に専念する事になり、その後、無事に全国出版された事によって、その事実こそが私にとって、大いなる自信となっている。つまり、壮大なる夢の続きは、まだまだこれからだという事なのである。……チャンチャン!