阿波美アワビ図鑑・田井の浜日記:徳島県美波町

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【詩】【徳島市内~1996年7月~】 この街~失われた10年に想いを寄せて~

徳島市回想記

【詩】【徳島市内~1996年7月~】

   (阿波詩集、回想記)



この街~失われた10年に想いを寄せて~

 

駅の左側にCITYができて 

大喜びしたのは何年前の話だっけ?

駅の右手にアミコができて 

すんげぇ!と思ったのは何年前の話だっけ?

その駅がいつの間にやら クレメントプラザに変わって

もうどれぐらい月日は 繰り返しているんだっけ?

 

本が大好きだった僕が よく利用していた駅前の本屋さん

中に入ればほとんど変わっていない 

あの頃とほとんど変わらない内装

それでも その中で 売られている商品はすべて 

入れ替わってしまった

 

遠くの方に眉山が見える 元町商店街を歩いていく

そこには あの頃と変わらない風景 

強い陽射しとアーケード

今年も 阿波踊りのシーズンが来るのを 

この通りは待ちわびている

 

懐かしい新町橋が見えてきた

眉山がますます その大きな姿を 

僕の目の前に表してくる

橋の脇では小さな噴水が 真夏のオアシスを演出している

これでも確かに懐かしさは感じているのだが 

幼い日々の僕の姿は 

どうやら ここでは迷子になってしまっているらしい

 

東新町の通りを歩いていく 

もはや営業をやめてしまった百貨店

 

あの頃と微妙に違っているのは 

たぶんちょっとしたお店の雰囲気と

街を行く若者たちのファッション

ダイエーの手前には いつのまにできたのだろうか?

「コルネの泉」という ちょっとオシャレな噴水広場

 

あの頃よく来た映画館でさえ 

それらがある場所は変わっていなかったが

それをとりまく 街の気配がもはや 

あの頃とは変わり果てているのだ 

 

あぁ 暑い! ふぅっと溜息をついた時 

東新町を吹き抜ける風

阿波踊りの垂れ幕が ユラユラと 

まるで阿波踊りのように揺れる

この街に よしこののリズムが響き渡るのも もうすぐ

 

藍場浜公園で 楽しそうに遊んでいる子供達

お母さんに連れられて 虫取り網と虫かご

わんぱく笑顔で振り回す 元気をふりまいている

あはははは そこ行くちっちゃなお嬢ちゃん

随分楽しそうだねぇ それでも僕には 

ここで遊んだ記憶はないのです ねぇ この場所は

僕の想い出の場所じゃぁなくって お嬢ちゃんがいつか

おっきくなってお嫁さんになる頃には きっと 

お嬢ちゃんにとっての想い出の場所

 

いつの日にも 街は人々の生活の中で深い息をしていて

僕らの記憶なんかおかまいなしに 

ただその表情を変えていく

思えば 街とは とってもわがままな生き物

十年ひと昔と 人はよく言うけれど 懐かしい風景など 

今ではもはや幼い頃の記憶の中にしか 

その生命を感じる事はできない

この街もずいぶんと変わってしまった

 

が しかし 変わってしまったのは 決して街だけではない

十年という歳月は 追いかけるべき夢も

愛すべき人への想いも すべて 

そして この僕のすべてさえも 変えていってしまった

 

街に歴史があるように 一人の人の人生という

一つの歴史の流れがあって

その流れがお互いに交錯し 乱れあい 憎みあい 愛しあい

新しい生命が生まれ そして

それらひとつひとつの出来事が 積み重ねられて 

築き上げられていくのが きっと街と人の歴史

 

街の表情が変わっていくのは 決して 悪い事ではない

古い建物が壊され その土地が有効活用され 

街が近代化されていくように 僕らもよりよく

変わっていこう! ちょっぴり退屈になった愛だって

その愛し方を工夫すれば なんとかやってゆけるだろう

 

あぁ 僕の想い出の街よ! 

さようなら さようなら 

また逢う日まで

今の僕には 想い出ばっかりは 

あんまりたくさんいらないのです

 

明日っから 

どうやって生きていこうかな?

 

もしも嫌いな自分が

僕の中にいたとしたら

 

そいつを追い出して

 

そいつを追い出して

 

僕をきれいにしなくっちゃ! 

 

僕をきれいにしなくっちゃ!

 

これからも 

もっともっと良くなるように

 

僕を磨いていかなくっちゃ 

 

僕を変えていかなくっちゃぁ

 

ねぇ 街を吹き抜ける風よ! 

そう思わないかい?

 

十年前よりは随分と素敵になった 

この街のように・・・ネ!